相模野基線
相模野基線(さがみの-きせん)は、日本の三角測量の基本である直線の一つです。
■ 基線の必要性
基線は、国内で正確な地図を調製するために設置されました。
基線(直線)の長さを正確に観測し、その両端から目標までの角度を正確に観測することで、目標までの相対的な位置を求めていきます。
これを繰り返すことで、国内に三角点網が作られました。
■ 測量作業
1882(明治15)年3月から準備が始められ、9月から10月にかけて(106日間)測量が行われました。
観測には、ヒルガード式測桿(4m)を3本繋いだものを使用し、結果は【 5209.9697m 】(誤差 2.931mm)でした。
これを、現在公開されている成果値(経緯度)と国土地理院が提供する計算プログラムを用いて2点間の距離を求めると【 5210.092m 】となるので、その差はわずか0.1223mとかなりの精度で求められていました。
その後、1910(明治43)年と1924(大正13)年にインバール基線尺、1972(昭和47)年に光波測距儀、1995(平成7)年にはGPS測量機、そして、2012(平成24)年にはGNSS測量機で観測が行われています。
これらの観測で、関東大震災前後で約24cm、東北地方太平洋沖地震前後で約1.5cmの変動が生じたことが確認されています。
平成22(2010)年、地形図全国整備計画に基づき設置され、全国5万分の1地形図完成に至る我が国近代測量の発祥地であることを理由に、選奨土木遺産になりました。
■ 基線を構成する三角点
● 北端
北端点は、一等三角点「下溝村」です。
点の周囲は建築物で覆われており、観測当時のような視通は全くとれなくなっています。
北端点へは、小田急小田原線 相模大野駅から神奈川中央交通バス([大60]女子美術大学行き 他)で、麻溝台中学校入口バス停で下車。バス進行方向にすすみ、一つ目の十字交差点を右折するとすぐにあります。
● 南端
南端点は、一等三角点「座間村」です。
現在は鳥羽内科の敷地内にあり、北端点と同様、非常に使用しずらい状況です。
南端点へは、小田急江の島線 南林間駅から徒歩約20分です。
● 中間点
北端と南端の間に四等三角点「基線中間点」が存在します。
当時の測量器械では5kmという距離を一度で観測することはできないため、3分割して観測したと記録されています。
この中間点は、分割した3つの区間の直線性を確認するために設置されたものです。
なお、3分割した時に設置した中間点は現存していないとのことです。
■ 参考文献
長谷川昌弘・川端良和:改訂新版 基礎測量学, 電気書院, 2010.
国土地理院ウェブページ(http://www.gsi.go.jp/)
山岳地理クラブウェブサイト(http://www.jac.or.jp/info/doukoukai/chiri/agc01.html)
山岳地理クラブウェブサイト(http://www.jac.or.jp/info/doukoukai/chiri/agc_04chuukann.html)
現地設置案内板
■ 次回予告
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