カテゴリー:土木遺産
KINSOKU お仕事図鑑

俺の土木遺産-08|新町高架橋

《 第 8 話 》
俺が幻の鉄道線でつーんだつーんだするわけがない!

ごきげんよう、卒業と同時に国家資格〔測量士・測量士補〕が取得できる近畿測量専門学校(国土交通大臣登録校)です。
今回のお仕事図鑑は、連載企画「俺の土木遺産がこんなに楽しいわけがない。」です。

※ このページの最下部に、アーカイブがあります。
※ この連載は、平成26(2014)年度のメールマガジン登録者向けweb連載を再編集したものです。

幻の鉄道

今回は、幻の鉄道である「五新線(五新鉄道)」をご紹介しましょう。

五新線は、五条駅(奈良県五條市)と新宮駅(和歌山県新宮市)を結ぶ、延長106.3kmの未成線です。
明治末期に計画され、1939(昭和14)年に着工。
戦争による工事中断もありながら、1959(昭和34)年には城戸駅(現・五條市西吉野町城戸)まで(11.7km)の路盤が完成しました。

この頃、近鉄や南海が電化工事や直通運転を提案。
沿線自治体の思惑も入り交じった後、バス専用道路として暫定利用することが決まります。
もし、近鉄が延伸していれば、今頃、大阪阿部野橋駅-新宮駅間の特急列車が運転されていたかもしれません。

その後、阪本駅(現・五條市大塔町阪本、未成駅)まで工事が進められましたが、国鉄(当時)の財政悪化により1982(昭和57)年には工事が中止。
今日に至るまで、一度も列車が走ることはありませんでした。
竣工したトンネルや橋梁はそのまま残存しており、このうち「天辻トンネル」(延長5,039.50m)は大阪大学核物理研究センター大塔コスモ観測所として転用されています。

残された構造物

新町高架橋の全景

ここに単線の鉄道が敷かれる計画であった。

開通することはありませんでしたが、建設された構造物は現在も見ることができます。
有名な遺構の一つとして、五條市内に残るアーチ橋「新町高架橋」があります。
戦時中に建設されたため、竹で土台を組んで建設された無筋コンクリート充腹アーチ橋です。
残念ながら、この高架橋区間は列車どころか路線バスすら通らないまま現在に至ります。
地理院地図でみてみると、明らかに鉄道線であるかようなカーブを描いたところがあります。

※ 国道24号の拡幅工事のため、国道との交差部はすでに撤去されています。

実は無くなったところもある

高架橋の末端部分。ここから紀ノ川を渡る橋梁となる予定であった。

この高架橋は、1941(昭和16)年に吉野川(紀ノ川)の手前まで完成していました。
吉野川をわたるために橋脚は建設されたもの、橋梁そのものは架橋されませんでした。
地理院地図で過去の空中写真(1974〜1978年)をみると、橋脚が立っているのがわかります。
なお、橋脚は後に撤去されましたが、河底には基礎が残っているとも言われています。

建設の由来

林業が盛んな奈良県南部で、吉野杉を鉄道で輸送しようと企画したのがきっかけでした。
しかし、建設費の確保、高度な建設技術が必要なことに対してまとまった輸送量の見込みがなく、さらに、並行する国道168号の整備が進みトラック輸送への転換が進んだことが未成線となる要因となりました。

2016(平成28)年、「紀伊山地を鉄道で貫く大構想に駈けた先人の志を未来に語り継ぎ、沿線住民にも親しまれている」として土木学会選奨土木遺産となりました。

備考

ここで紹介した写真は、2006(平成18)年3月に撮影(土木遺産調査)したものです。
現在、新町高架橋を含め五新線(旧バス専用道路)の遺構へは立ち入りできません。

アクセス

JR和歌山線 五条駅から徒歩15分
※ 近隣に駐車場はありません。

次回予告

《 第 9 話 》俺が幻の鉄道線でつーんだつーんだするわけがない!サンシャイン!!


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