俺の土木遺産-03|丹生川橋梁
《 第 3 話 》
俺が橋を見るためだけに高野山とかに行くわけがない!
ごきげんよう、卒業と同時に国家資格〔測量士・測量士補〕が取得できる近畿測量専門学校(国土交通大臣登録校)です。
今回は、隔週でお届けする(予定)の連載企画「俺の土木遺産がこんなに楽しいわけがない。」です。
※このページの最下部に、アーカイブがあります。
※この連載は、平成26(2014)年度のメールマガジン登録者向けweb連載を再編集したものです。
■ 高野山へようこそ!
某OSの最初に出てくる「ようこそ」ほど温かみのないものもありません。
そんなことはさておき、前回の由良洞隧道の調査が終わる・・・こともなく、次の依頼がやってきました。
「はい、調査課・・・なぁにッ?!」
「遺産は会議室にあるンじゃない!現場にあるんだ!!」
(某ドラマ風にお読みいただくと、効果を実感できます。)
今度は霊場・高野山。
しかも、山に行くというのに、調査対象は隧道(トンネル)ではなく橋梁。
山中にかかる橋梁ならば、そこあるのは谷だ。
道なき道を歩き、遠いところから望遠レンズを使って撮影というのが王道・・・そんな王道を、ド素人にさせるというのか?
■ 高野山にいってきまスカンク!
そういえば、いってきまスカンクってリュックサックを背負っているんですよ。
そんなことはさておき、早速ご紹介しましょう。
今回は、各ページのアイキャッチ画像にもある、コチラの橋梁!
本日の土木遺産は、和歌山県伊都郡九度山町九度山にある丹生川橋梁(にゅうがわ・きょうりょう)です。
丹生川橋梁は、南海高野線 九度山駅-高野下駅間にある延長73mの上路トラス橋です。
地理院地図で場所を確認しましょう。
南海高野線は、橋本駅を出て紀ノ川を渡ると、本格的な山岳区間となります。
九度山駅を出ると丹生川の右岸にそって、標高90mの等高線に沿って南下していきます。
そして、丹生川を渡り、上り勾配のトンネルを経て高野下駅(標高115m)で到着します。
ちなみに、橋梁の南西にある「237.7」という数値がある「△」に「・」の記号は三角点といいます。
※三等三角点「九度山」(選点:明治36年5月23日)
■ 強力なイギリス積み
この橋梁のスゴイところは、橋脚と橋台ともに「イギリス積み」という形式のレンガ積みであることです。
レンガの積み方には、イギリス積みのほかに「フランス積み」、「オランダ積み」、「長手積み」などがあり、レンガの大きさも東日本と西日本でやや異なるなど特徴があります。
また、数万個に1個という割合で、製造場所を記す刻印があるレンガあると言われています。
積み方には時代の流行みたいなものがあるのですが、土木構造物では、しっかりとした安定感があるとされるイギリス積みが多く採用されています。
大正14(1925)年7月竣工、今年で93年目。
現在でも現役橋梁として、通過する列車をしっかりと支えています。
■ 山岳区間に鉄道ができる理由
こんな不便でお客さんが少ないところに、どうして鉄道があるんだ?と思う人もいますよね。
これには理由があります。
宗教への信仰が厚い明治から大正時代は、より気軽に参詣できるように神社や霊場に向けて鉄道の敷設が盛んでした。
近畿では、伊勢神宮、橿原神宮、そして、高野山が著名なところです。
南海高野線は、大正4(1915)年に橋本駅まで、昭和4(1929)年には極楽橋駅まで開通。
それまで徒歩だった多くの信仰者は、鉄道で容易に高野山へ参詣することができるようになりました。
現在でも、年間110万人以上が訪れている高野山。
土木・測量という仕事は、人々が平和で安らかに過ごしたいという願いを支える、とても有意義でやりがいのある、そして歴史に残る仕事なんですね。
それでは、次回もお楽しみに。
■ 次回予告
《第 4 話》 俺が橋を見るためだけに高野山とかに行くわけがない!サンシャイン!!
(参考文献)
・和歌山県近代化遺産(建造物等)総合調査報告書
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