俺の土木遺産-02|由良洞隧道
《 第 2 話 》
俺が和歌山の山中まで調査にいくわけがない!
ごきげんよう、卒業と同時に国家資格〔測量士・測量士補〕が取得できる近畿測量専門学校(国土交通大臣登録校)です。
今回は、隔週でお届けする(予定)の連載企画「俺の土木遺産がこんなに楽しいわけがない。」です。
※このページの最下部に、アーカイブがあります。
※この連載は、平成26(2014)年度のメールマガジン登録者向けweb連載を再編集したものです。
■ 事前調査
まずは、前回にもあった上の写真から。
なにかわかりましたか?
そう、某猫型ロボットのポケットから出てくる「ガ○バートンネル」・・・なわけがない。
そう、あの光の先には夢の国が・・・なわけがない。
これは、トンネルのなか。
しかも、タダのトンネルではない!・・・タダではないといっても、有料/無料ってわけではありません。
これは、素掘りトンネルなんです。
コンクリートも、レンガもない、掘ってそのままのトンネルです。
■ 現地調査
ご紹介しましょう。
本日の土木遺産は、和歌山県日高郡由良町にある由良洞隧道(ゆらどう・ずいどう)です。
近くに国道42号(熊野街道)がありますが、ここはその旧道にあたり、現在では県道23号(御坊湯浅線)となっています。
地理院地図で場所を確認してみましょう。
国道42号(赤色の道路)は、標高90mあたりをトンネルで貫通していますが、旧道(黄色の道路)は標高150mあたりで貫通しています。
等高線と道路の関係をみると、できるだけ勾配を避けるように道路が敷かれているのがわかります。
ちなみに、国道42号沿いにある「80.2」という数値がある□に・の記号は水準点といいます。
※一等水準点「第4907号」標高80.1888m
素掘りと紹介しましたが、地盤の状況に応じて、一部区間はレンガ積みであったり、モルタルを吹き付けた状態となっています。
レンガは、当時の土木工事では「大流行」であったイギリス積み(天井のアーチ部分は長手積み)です。
出入り口部分(これを、「ポータル」といいます。)もレンガ積み。しかも鳥居型という特徴・・・ところどころ崩落していますが、なんともスバラシイ<わかるか?この芸術っぷり!!
上部にある五角形の笠石には、(写真ではわかりにくいですが)彫刻があります・・・萌えます!
上部にある五角形の笠石には、(写真ではわかりにくいですが)彫刻があります・・・萌えます!
「芸能人は歯が命」とはいいますが(古ッ!)、トンネルはポータルが命。
ポータルをみれば、このトンネルに対する先人たちの意気込みを垣間見ることができます。
■ 資料調査
由良洞隧道は明治21(1888)年に建設されたもので、今年で130歳。
現役最古級の道路用煉瓦トンネルです。
かつての熊野街道は、道幅が狭くかつ急勾配が続いたため、人・物の往来が困難な状態でした。
そこで、地元が出資し、かつ、労働力を提供して建設したのがこのトンネルです。人々が生活をより豊かにすることを夢見て、みんなで力をあわせた賜物です。
しかし、開通から20年後にはさらに便利な新しいルートが建設され、人と物の往来はすっかり変わってしまったそうです。
今ではほとんど維持管理が行き届いておらず、破壊が進みつつあります。
ほとんど往来もなく、この調査で1時間ほど現地にいましたが、軽自動車がたった1台通過しただけでした。
これからも知られることなく、このまま破壊がすすむことは、とても寂しく思います。
それでも、先人たちが将来の発展を願って、人力のみで長さ139.5m・幅3.3mのトンネルを掘削したことは事実。
土木・測量という仕事は、このように市民の願いを実現するためのお手伝いという、とても有意義でやりがいのある、そして歴史に残る仕事なのです。
それでは、次回もお楽しみに。
■ 次回予告
《第 3 話》 俺が橋を見るためだけに高野山とかに行くわけがない!
(参考文献)
・和歌山県近代化遺産(建造物等)総合調査報告書
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